人気タレントは番組スタッフが「作っている」。

2020年8月20日テレビ番組

テレビで1日に何度も何度も同じタレントを目にするという経験はないだろうか。今回は人気タレントがブレイクする法則について考えた。

人気タレントは番組スタッフが「作った」存在だ

私はこれまで無名のタレントが有名になる経緯について考えたことがなかった。藤田ニコルさんやゆきぽよさんのようなモデル出身タレントが連日テレビに出ていることを不思議にも思わなかった。ところがある日、何気なくニュースアプリの芸能コーナーを読みながらこう思った。

同じタレントばかりバラエティに呼ばれるのには必ず理由があるはずだ。

芸能ニュースをさらに詳しく読んでいると、関連記事に『いま〇〇がバラエティで大活躍』と、タレントがブレイクした理由についてまとめた記事が見つかった。人気タレントに対する評価が以下のように掲載されていた。

「〇〇さんは短くて的確なコメントを返してくれる」アシスタントディレクターA

「一方で△△さんは司会者がイジらないと面白さを発揮できない」プロデューサーB

私が驚いたのは、記事に視聴者の声が一切書かれていないことだ。テレビでよく見る「あのタレント」についてどう思うのか、視聴者の意見が見えてこない。番組スタッフからの評判ばかりが埋め尽くされていることを不思議に思った。

そのとき私はひらめいた。番組スタッフが発掘した、番組スタッフにとって使いやすい素質をもつタレントだけがテレビの人気者になれるのだと確信した。私たち視聴者の好き嫌いは関係ない。丸山桂里奈さんも滝沢カレンさんも朝日奈央さんもみな、ブレイクするべくしてブレイクしたタレントなのだ。

テレビ番組とネットメディアの違い

番組スタッフが人気タレントを「作っている」ともいえよう。つまりタレントは、演出スタッフにとって使いやすい(適材適所でリアクションする、簡潔なコメントを返す、顔が映える)存在なら出演オファーをもらいやすくなるし、好きな視聴者のもとにも嫌いな視聴者のもとにも自身の姿が映る。ギャラをもらいながら広告を載せているのと同じような状態だ。

では、ブログやSNSのようなネットメディアでも同じことが成立するだろうか。

ネットで人気の投稿者にいえる法則

私はネットメディアには資本主義経済の原理がはたらくと考えている。つまり、面白いor役に立つクリエイターだけが生き残るようなアルゴリズムが組まれている。タレントはよほどのクレームが来ない限り、視聴者が好こうが憎もうがテレビに出続けられる以上、視聴者と演者が直接的に繋がっているとは言い難い。

ネットの世界では人気者が露出を増やす。いっぽう芸能界では(番組スタッフの需要に応えて)露出を増やした者が人気者になる。真逆のロジックがはたらくのが実におもしろい。

ネットメディアの特性についてもう少し解説しよう。例えばYouTubeやブログを公開しているネットの発信者は、固定ファンがつき視聴回数が増えるほど多くの人の目に触れやすくなる。おもしろいYouTuberが再生回数を伸ばし、人の役に立つブログが拡散され露出を増やす。至極合理的だ。

次にネットメディアの仕組みについて説明する。

例えば、私がスーツさん(鉄道YouTuber)の動画を見て高評価ボタンを押すほど、まだスーツさんを知らない人のおすすめ動画一覧に動画が表示されやすくなる。人気が高まればホーム画面のおすすめに表示されることもある。これはYouTubeのアルゴリズムに起因する仕組みだ。

ネットの発信ツールは、もともと無名の投稿者が人気クリエイターになるのを誰もが手伝える仕組みになっている。最初は数人の固定ファンのなかで共有されていた「小さな人気」が大きな露出を生むのだ。

人気タレントは誰にとっての「人気」なのか?

一方でテレビでは全反対のロジックがはたらいている。まず番組スタッフが、タレントとテレビの前の視聴者のあいだのポジションをとる。仲介役であるスタッフが番組に使いやすい芸能人を繰り返し起用することで「結果的に」露出が増えて、私たちのもとにすんなり溶け込んでお茶の間の人気者になる。無名に近い状態だったイモトアヤコさんを人気タレントにしたのは、イモトさんにバラエティの素養を見いだした「イッテQ!」のスタッフなのだ。

良くも悪くも、演出スタッフが欲しがる芸能人が有名になる。この記事では「人気」という言葉を複数回使っているが、芸能人はテレビ局の演出スタッフに「人気」なのであって、必ずしも視聴者にとっての人気とは一致しないと思う。繰り返しになるが、タレントはよほどのクレームが来ない限りは基本的に視聴者の好き嫌いに関係なくテレビに出られるからだ。

ただし、人気アーティストやYouTuberが一人のタレントとしてテレビに呼ばれるなど、テレビとネットが融合する場合は別だ。テレビを見る習慣のないファンの好きとテレビ露出が繋がるからだ。

さいごに

私はここまでで述べてきたテレビのブレイクの仕組みを否定しているわけではない。バラエティ番組は大好きだ。私はただ、インターネットとテレビの違いが興味深くて仕方がないのだ。